TOYO TIREの価値創出

外部環境・リスクと機会

「中計’21」の策定・遂行の前提としているマクロ環境、及びそのなかで2030年頃までに進行することが想定されるモビリティ分野の変革を踏まえ、当社はリスクと機会を認識し、バリューチェーン全体のオペレーションと製品・サービスを通じ、価値創造につなげていきます。

マクロ環境認識(~2025年頃)

コロナ禍を経た消費行動の大幅な変化

  • マインド:外出回避・節約志向・対人接触回避
  • 行動:EC/キャッシュレス購買・要求サービス変化

地政学リスクのさらなる高まり

  • 米中覇権争いをはじめデカップリングの波は継続
  • コロナ禍により加速する経済格差もポピュリズムを促進

社会・環境価値×経済価値を両立させる取り組み加速

  • 従業員・顧客満足を優先した取り組みに価値
  • 顧客と生産者との協働により公益と経済価値向上を両立するトランスフォーメーションの加速

省人化対策技術の進化と導入加速

  • 労働人口の伸長減速を補うデジタル投資の加速
  • データの質・量の拡大により、ヒトに要求される役割の高度化

モビリティ分野の変化(~2030年頃)

環境・EV化の拡大

自動運転移動サービスや移動代替サービスの活用増加

IT活用(モビリティ関連データ連携)の深化

個々のニーズ・利便性の追求による多様性の進行

サステナビリティに関する潮流

環境

  • 脱炭素化の加速(移行計画)
  • プラスチック汚染対策
  • 循環経済への移行
  • 自然資本に対する関心の高まり(森林破壊への監視強化を含む)

社会

  • 人的資本に対する関心の高まり
  • 人権対応要請の強化

リスクと機会

機会

  • EV対応における技術革新と独自性の付加による需要拡大の機会
  • 環境対応における技術革新と独自性の付加による需要拡大の機会
  • 物流業界(日本)の非化石エネルギー転換義務化に伴うEV商用車の需要拡大の機会
  • メンテナンスフリー対応やソリューションビジネスの事業機会

機会を認識し、価値創造につなげる商品・サービス

  • 【EV専用/対応タイヤ】ライフサイクルでCO2排出量低減・資源循環を考えた商品展開(乗用車/商用車)
  • 高耐久力(耐摩耗性)・メンテナンスフリータイヤ、エアレスタイヤ
  • センシング、摩耗診断

リスク

  • 気候変動対応におけるリスク
  • 強固な人財基盤が確保できなくなるリスク
  • サプライチェーンを含めた環境対応・人権対応におけるリスク
  • バリューチェーン全体での環境対応を含む品質の確保におけるリスク
  • 安全・安心に対する要求の高まりにおけるリスク

リスクを認識し、価値創造につなげるオペレーション

  • 【基盤強化】人的資本経営、健康経営
  • 【基盤強化】資源循環・リサイクル促進の技術開発
  • 【リスクマネジメント】エネルギー効率の向上・再生可能エネルギーの利用拡大
  • 【リスクマネジメント】責任ある原材料調達・トレーサビリティ
  • 【リスクマネジメント】サプライヤーエンゲージメント
  • 【リスクマネジメント】バリューチェーン全体での品質強化(プロセス保証、市場での個体管理システム、タイヤの安全啓発)

価値創造プロセス

TOYO TIREグループでは、企業としての将来の姿をより明確に読み取るために、理念やビジネスモデル、ガバナンスや事業機会・リスクを整理し、開示することが重要であると考えています。価値創造プロセスでは、自社の6つの資本を言語化し、これら資本を活用して事業活動で生みだすアウトプット、ステークホルダーに影響するアウトカムを定義しました。

価値創造図クリックすると大きい画像で見ることができます

TOYO TIREの強み

当社は、「中計’21」の期間を通じ、グローバルでの全機能連携によって、変化に迅速かつ柔軟に適応する力の強化を図っています。

TOYO TIREの強み図

(生産)グローバルでの最適な生産・供給体制

生産拠点のある市場において地産地消を進める一方、顧客ニーズの多様化や需給の変化へのフレキシビリティを高めるため、各工場における生産品種構成(プロダクトミックス)の最適化や生産の平準化を図っています。それらを通じて、届けるべきお客さまへタイムリーな製品供給を実現しています。例えば、当社が強みとするSUV/ピックアップトラック用大口径タイヤの北米市場で絶大な支持を受けており、それらの需要に対応するため、米国工場の生産能力を強化するとともに、日本工場では設備の更新によって、また2022年に稼働したセルビア工場においても北米向けの供給機能を果たしています。
そうした柔軟な生産対応を可能にする人財が強みでもあり、工場の特性や所在国の状況を考慮した方針にもとづいて人財育成を行っています。一方、特に国内の労働人口の減少とそれに伴う技能・ノウハウの承継という課題については、データドリブン経営に向けた全社的な取り組みに沿って、ERPとの連携や新たな生産システムの導入などにより、作業の平準化を進め、業務の属人化解消を図っています。作業の平準化は、生産現場での多様性の拡大にも繋がると考えています。

(技術)独自の技術と日・米・欧の3極R&D機能連携

自動車業界が大きな変革期を迎えている今、タイヤにも「モビリティの進化」を支える明確な性能や機能をスピーディに実現していくことが求められます。当社は独自のゴム材料基盤技術「Nano Balance Technology」とタイヤ設計基盤技術「T-MODE」の両輪を基軸として、双方を連携させて高性能・高品質な製品の開発を行なっており、これらの技術基盤を継続的に更新しています。
そして、日本・米国・欧州の各R&D拠点で役割分担された研究の成果を結集し、販売、生産の各部門と連携して市場に応じた高機能な差別化商品の開発に繋げています。
「T-MODE」に代表されるように技術開発分野でもAIの活用が不可欠になってきています。当社は、AIが導く結果だけに頼りすぎることなく、どんな原理に基づいて設計し、何が良いからこのタイヤは良いと言えるかを説明できることが技術者にとって肝要だと考えています。AIによって自身の思考力やキャパシティを広げられるような技術者の育成・レベルアップに取り組んでいます。

強み1の図クリックすると大きい画像で見ることができます

(販売)持たざるを強みとして築く強固な顧客基盤

タイヤの販売において自社直営の販売店を持たない当社にとって、最も近いお客さまはディーラーです。ディーラーが最終ユーザー(消費者)に届けたいと考えている商品の顕在ニーズを理解することはもちろん、各ディーラーが当社にどのような提案やサービスの付加価値を求めているかという潜在ニーズをも引き出し、応えることが重要になります。市場によって多岐に分かれるお客さまのニーズに対し、当社が応えるべきものを緻密につなぎ合わせることにおいて、当社の小回りの利く機能組織間の連携、市場の前線からもたらされる情報への機敏な適応力が強みです。
北米の事業戦略は、当社のタイヤ事業における象徴的なビジネスモデルを形成しています。販売部門では、商品戦略とチャネル戦略の両輪を回すために、自社の業界でのポジション・強み・弱みを正しく理解するという意識づけを徹底しています。

強み3の図

(商品企画)豊かなモビリティライフを実現する商品企画

生産・販売・技術の狭間に生まれる議論をリードする、あるいは各機能が専門的に独立しているために見落とされがちな連携の必要な議論を拾ってつなぐなど、全社的な価値創造に導く役割を担う部門の一つに商品企画があります。
モビリティの変化や市場の注目・関心事だけに着目するのではなく、「タイヤに求められる基本性能を押さえたうえで、モビリティのある生活をより楽しく面白くする企画を具現化する」という商品企画のスタンスが、差別化商品の創出に繋がっています。特に、海外販売会社との日常的なコミュニケーションの良さを強みとしており、それらを通じて得られた次のトレンドや商品アイデアの着想を、技術部門が自動車業界の動向やタイヤに求められる性能・機能レベルを見越してアップデートしている基礎技術と融合させ、具現化していきます。
お客さまがタイヤを使う生活シーンを考えながら生み出す商品は、単なる消耗品としてではなく、豊かなモビリティライフを実現する嗜好品として提案できるものと考えています。