全企業活動における脱炭素を追求する

取り組むべき課題

  • 気候変動によるリスクと機会への対応(TCFD)
  • 温室効果ガスの排出削減
  • クリーンエネルギーの利活用拡大

関与が大きいステークホルダー

  • 直接的:地域社会、地球環境、顧客
  • 間接的:株主・投資家、債権者、NGO、業界団体

取り組み方針

近年、気候変動による大雨・洪水等の異常気象・自然災害が頻発し、当社グループにおいても、タイヤの主要原材料である天然ゴムの生育への影響や工場稼働への影響、サプライチェーンの寸断などのリスクが高まってきていると認識しています。
また、パリ協定において合意された平均気温上昇の2℃未満への抑制や日本のカーボンニュートラル目標の実現に向けて、当社グループの事業活動においても、CO₂等の温室効果ガスを削減する取り組みが不可欠と認識しています。
気候変動による影響が深刻化するなか、モビリティに対する社会的要請はますます高まっています。モビリティ事業を事業経営の中核に据える当社グループにとって、気候変動への対応は当社グループの成長を左右する最重要課題であると認識しています。パリ協定が掲げる長期目標の達成に向けた温室効果ガスの排出削減はもちろんのこと、クリーンエネルギーの利活用拡大も、現代社会のみならず将来世代に対する責任であると捉え、2050年にカーボンニュートラルをめざし取り組んでいます。
以上のような背景より、当社はTCFD提言に対して賛同するとともに、今後、TCFDの開示フレームワークに沿って、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」に関する情報開示を通じて、ステークホルダーの皆様との対話を活性化させ、気候変動に関する取り組みを推進することで、持続可能な社会の実現に貢献していきます。
当社は国内・海外の各拠点において気候変動やエネルギー使用量削減などに関する法律や規制(「地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)」や「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律(省エネ法)」など)や政策を支持し、これらへの対応を適切に行っています。

責任(2024年4月現在)

執行役員 品質環境安全統括部門管掌

活動推進体制(2024年4月現在)

サステナビリティ委員会(委員長:社長、年4回開催)で気候関連を含むサステナビリティ課題への対策や対応状況について報告、審議、決裁を行っています。
サステナビリティ委員会の下に、品質環境安全統括役員を責任者とする「脱炭素タスクフォース」を設置し、事業活動におけるCO₂削減に向けた活動計画や目標・KPIなどを議論しています。タスクフォースの取り組みの進捗については、サステナビリティ委員会で定期的に確認・モニタリングを実施しています。
サステナビリティ委員会で審議、決裁された気候関連事項は、経営会議にて報告または審議されるとともに、年度計画、中期事業計画の策定、見直しの際に反映されています。
サステナビリティ委員会及び経営会議で報告・決裁された気候関連事項については、適時適切に取締役会にも報告されています。

活動推進体制図

苦情処理システム(窓口)

  • ホットライン相談窓口(内部通報制度)…【対象】役員、従業員、取引先
  • お客様相談室…【対象】顧客(消費者)、地域社会
  • Webお問い合わせフォーム…【対象】顧客(消費者)、株主・投資家、NGO

活動を推進する主な資本(2023年)

主たる事業エリア内で生じる気候変動への適応および緩和のための費用:3,252百万円

取り組み:気候変動によるリスクと機会への対応(TCFD)

戦略

気候変動が当社グループの事業活動に及ぼす影響について、シナリオ分析を実施しました。
シナリオ分析の実施プロセスの概要は下記のとおりです。

  1. ①検討シナリオの選定と各シナリオの世界観の把握
  2. ②各シナリオにおけるリスクと機会を検討
  3. ③リスクと機会の重要度評価を行い、重要度の高いリスク・機会を特定
  4. ④中長期で影響が大きいと見込まれるリスクの財務的影響を算定し、対応策を検討

シナリオ分析の実施プロセス(イメージ)

①シナリオの選定、各シナリオの世界観の把握 ②リスク・機会の検討 ③リスク・機会の重要度評価の実施

①検討シナリオの選定と各シナリオの世界観の把握
シナリオ分析では、現行シナリオ(3~4℃シナリオ)と移行シナリオ(1.5℃シナリオ)の2つのシナリオにおける気候関連のリスクと機会の影響を評価しました。
現行シナリオにおいては物理的リスク、移行シナリオにおいては移行リスクの洗い出しを実施しました。

  現行シナリオ 移行シナリオ
概要 現状を上回る排出量削減対策が取られず、21世紀末の平均気温の上昇が最大で3~4℃となる世界を想定 21世紀末の平均気温の上昇を1.5℃に抑えるために、脱炭素化の取り組みが進展される世界を想定
シナリオの世界観
  • ・現在想定されている以外に政策導入や規制強化が行われない
  • ・一部では、経済成長に伴い、温室効果ガスの排出量が増加
  • ・気温上昇に伴い、極端に暑い日や大雨などの自然災害が激甚化
  • ・気候変動の緩和に向けた政策導入や規制強化が実施される
  • ・温室効果ガスの排出量が減少し、2050年までに世界全体の実質排出量がゼロとなる
  • ・気温上昇により海面上昇や気候パターンの変化が生じるが、変化は現行シナリオよりも抑えられる
主な参照シナリオ
  • ・IEA Stated Policies Scenario(STEPS)
  • ・IPCC SSP5-8.5
  • ・IEA Sustainable Development Scenario(SDS)
  • ・IEA Net Zero Emission Scenario by 2050 case(NZE)
  • ・IPCC SSP1-2.6

➁リスク・機会の検討/③リスク・機会の重要度評価の実施

重要度評価結果をもとに、シナリオごとに気候関連のリスク・機会を抽出しました。
それぞれのリスク・機会に関する当社事業への財務的な影響を洗い出し、各リスク・機会の要因となりうる事象の「発生確率」と、当社事業において想定されるコスト等への「影響度」から、リスクと機会の重要度を評価しました。
各シナリオにおいて重要度の高いリスク・機会を抽出し、事業に与える影響の大きい項目を特定しました。

現行シナリオ - リスク(中期) の重要度評価

下記のオレンジ背景部分を、重要度の高いリスクとして特定する。

(中期:2030年頃)

現行シナリオ - リスク(中期) の重要度評価マトリクス
クリックすると大きい画像で見ることができます

現行シナリオ - 機会(中期) の重要度評価

下記のオレンジ背景部分を、重要度の高いリスクとして特定する。

(中期:2030年頃)

現行シナリオ - 機会(中期) の重要度評価マトリクス
クリックすると大きい画像で見ることができます

移行シナリオ - リスク(中期) の重要度評価

下記のオレンジ背景部分を、重要度の高いリスクとして特定する。

(中期:2030年頃)

移行シナリオ - リスク(中期) の重要度評価マトリクス
クリックすると大きい画像で見ることができます

移行シナリオ - 機会(中期) の重要度評価

下記のオレンジ背景部分を、重要度の高いリスクとして特定する。

(中期:2030年頃)

移行シナリオ - 機会(中期) の重要度評価マトリクス
クリックすると大きい画像で見ることができます

重要度の高いリスク・機会の一覧

<現行シナリオ> (凡例)短期:2025年頃、中期:2030年頃、長期:2050年頃

リスク
/機会
属性 気候関連事象 事業への影響 主な財務的影響 影響度
評価
リスク 慢性 気候パターンの変化
中~長期
  • ・天然ゴムの木の生育可能地域変動、品質低下
  • ・電力供給体制の不安定化
  • ・原油、天然ガスなどの需要拡大
  • ・原材料価格の上昇(天然ゴム)
  • ・研究開発費の増加(代替原料)
  • ・売上減少・収益悪化(タイヤ減産)
中~大
温度の上昇
中~長期
  • ・道路状況の悪化
  • ・降雪エリアの減少
  • ・研究開発費の増加(熱に強いタイヤ)
  • ・売上減少(冬タイヤ)
中~大
海面上昇
中~長期
  • ・天然ゴム収穫量減少
  • ・港湾・倉庫機能不全
  • ・原材料価格の上昇(天然ゴム)
  • ・売上減少(タイヤ減産・生産停止)
  • ・在庫・製品の毀損(洪水被害)
中~大
急性 異常気象の増加
中~長期
  • ・需要動向の不透明化
  • ・売上減少(需供ミスマッチ)
  • ・インフラ網の機能不全
  • ・売上・利益減少(全事業活動停滞)
中~大
大雨の頻発、激甚化
中~長期
  • ・輸送網の寸断、通勤手段の喪失
  • ・天然ゴム農園の冠水
  • ・売上減少・収益悪化(生産計画見直し)
  • ・原材料価格の上昇(天然ゴム)
中~大
  • ・事業所建屋の損傷・破損・倒壊
  • ・大雨に特化した製品ニーズの増加
  • ・売上減少・収益悪化(機能停止)
  • ・修繕費の増加(損傷建屋)
  • ・研究開発費の増加・売上減少(大雨対応製品)
熱帯低気圧の増加、激甚化
中~長期
  • ・海上輸送遅延、事故発生
  • ・輸送コストの上昇
  • ・在庫・製品の毀損
中~大
  • ・事業所建屋の損傷、停電
  • ・輸送網の寸断
  • ・収益悪化(事業停止)
  • ・修繕費の増加(損傷建屋)
リスク
/機会
属性 経済・社会の変化 事業への影響 主な財務的影響 影響度
評価
機会 慢性 気候パターンの変化、温度の上昇
中~長期
差別化商品(高耐久性など)開発による競争力強化(シェア拡大) 収益拡大(販売量増)
異常気象の増加、大雨の頻発・激甚化
中~長期
差別化商品(ウェット性能)開発による競争力強化(シェア拡大) 収益拡大(販売量増)

<移行シナリオ> (凡例)短期:2025年頃、中期:2030年頃、長期:2050年頃

リスク
/機会
属性 気候関連事象 事業への影響 主な財務的影響 影響度
評価
リスク 政策 カーボンプライシングの導入
中~長期
  • ・各種サービスへのコスト転嫁
  • ・物流費の増加
  • ・国境炭素税の導入
  • ・自動車関連の輸出品への環境関連税の導入
  • ・CO₂排出権の取引価格の上昇
  • ・研究開発費・設備投資の増加(低炭素製品へのシフト)
  • ・収益性の悪化(関税)
  • ・排出権購入価格負担増
ガソリン車・HEV車の販売規制
短~長期
  • ・EV向けタイヤの需要拡大
  • ・タイヤ要求性能の変化
  • ・ガソリン車・HEV市場の縮小
  • ・研究開発費・設備投資の増加(EV向けタイヤ開発、性能改善)
  • ・売上減少(タイヤ需要減)
カーボンフットプリントの義務化
中~長期
  • ・商品のライフサイクル全般におけるCO₂削減要請
  • ・CO₂排出割合の高い商品の淘汰、レピュテーションリスク
  • ・研究開発費の増加(リサイクルを想定した商品開発)
  • ・製造原価の増加(使用原材料・調達先の見直し)
  • ・売上減少(製品シェア減少)
技術 再生可能エネルギー技術の普及
中~長期
  • ・再エネ由来電力の供給拡大
  • ・原油産出量の減少
  • ・自動車メーカーの調達先への再エネ転換の要請
  • ・製造原価の増加(電力価格上昇)
  • ・原材料価格の上昇(合成ゴムなどの石化品)
  • ・研究開発費の増加(代替原料)
  • ・売上高減(自動車メーカーの要請非対応)
省エネルギー技術の普及
短~長期
  • ・省エネルギー技術の設備導入
  • ・新車の省エネルギー技術に応える商品需要の拡大
  • ・設備投資・修繕費の増加
  • ・研究開発費の増加(商品開発)
  • ・原材料価格の上昇(使用原材料の見直し)
低炭素技術の普及
中~長期
  • ・低炭素技術の設備導入、燃料転換対応(水素ボイラーなど)
  • ・低炭素技術を用いた商品需要の拡大
  • ・設備投資・修繕費の増加
  • ・研究開発費の増加(商品開発)
  • ・使用原材料の見直しによる製造原価増加
市場

評判
顧客の環境意識の向上
中~長期
  • ・CO₂削減に貢献する商品需要の拡大・商品志向変化、環境貢献に寄与する製品開発対応
  • ・CO₂削減を重視した取引先の選定
  • ・CO₂削減の取り組みを伝えるコミュニケーション活動
  • ・再エネ由来電力設備の導入要請
  • ・研究開発費増加(商品開発)
  • ・売上の減少(嗜好変化によるシェアの低下)
  • ・原材料価格の上昇(使用原材料の見直し、調達先の選定)
  • ・広告宣伝費の増加
  • ・設備投資・修繕費の増加(再エネ設備)
原材料コストの上昇
中~長期
  • ・採算性悪化によるゴム農家の減少
  • ・天然ゴム産出量低下による原材料価格の上昇
中~大
  • ・化石燃料由来の原材料価格の高騰、原材料メーカーにおける生産コスト上昇
  • ・石化品をはじめとする材料価格上昇による製造原価増加
リスク
/機会
属性 経済・社会の変化 事業への影響 主な財務的影響 影響度
評価
機会 市場 ステークホルダーの環境配慮行動の高まり
中~長期
  • ・環境配慮による取引先の拡大
  • ・環境配慮商品の付加価値向上
  • ・売上・利益の増加(取引先拡大、付加価値向上)
脱炭素向け商品市場の拡大
中~長期
  • ・脱炭素向け商品の需要の拡大
  • ・売上・利益の増加(付加価値向上)
製品

サービス
顧客の環境意識の向上
中~長期
  • ・環境貢献対応製品の開発・販売
  • ・売上・利益の増加(シェア拡大・付加価値向上)
EV・次世代車の普及
中~長期
  • ・EV用タイヤの需要拡大、早期開発・販売対応
  • ・売上・利益の増加(付加価値向上)
中~大
資源
効率
省エネ・効率化の促進
中~長期
  • ・省エネ・効率化設備の導入
  • ・省人化、従業員の職場環境改善
  • ・収益性の向上(生産効率の向上、不良品比率低減)
  • ・製造原価の減少(作業効率・工場操業度良化)
  • ・人件費の減少(離職率低下)
リサイクルの活用
中~長期
  • ・リサイクル材料を用いた商品開発、商品シェアの獲得
  • ・売上・利益の増加(シェア拡大・付加価値向上)
水使用量・消費量の削減
中~長期
  • ・水使用量削減設備の導入
  • 収益性の向上(水使用量減少)
エネルギー源 再生可能エネルギーの普及
中~長期
  • ・再エネ由来電力供給拡大
  • 使用電力料金の減少(再エネ由来)
  • ・早期の再エネ調達量の増加
  • ・売上・利益の増加(シェア拡大)
石炭・石油の価格高騰
中~長期
  • ・EV市場の拡大
  • ・売上・利益の増加(EV向けタイヤ販売)

④財務的影響の算定と対応策の検討

中長期で影響が大きいと見込まれるリスクの財務的影響を算定し、対応策を検討しました。

1.気候パターンの変化に伴う天然ゴムの調達への影響 【リスク】

属性 気候関連事象
/事業への
財務的影響
影響額
/発生年度
算定方法 対応策
慢性 気候パターンの変化
気候パターンの変化により、天然ゴムの木の生育可能地域変動、品質低下等の影響が生じ、天然ゴムの調達コストが増加する。
約7~約97億円
(中期:2030年)
(下限)
天然ゴム調達量×天然ゴムの上昇価格
  • ・天然ゴム調達量は過去実績から推定した2030年時点の天然ゴム調達量。
  • ・天然ゴムの上昇価格は、過去の大洪水発生月の価格上昇分を年間に均したもの。
(上限)
天然ゴム調達コスト増加額×天然ゴム調達量増加割合
  • ・天然ゴム調達コスト増加額は、大規模洪水が発生した年の調達コスト増加分。
  • ・天然ゴム調達量増加割合は、大規模洪水が発生した年から2030年までの調達量における推定増加割合。
  • ・タイヤ転がり抵抗低減を念頭に置いたタイヤの軽量化を推し進める事により、タイヤ1本あたりに使用する天然ゴム使用量を低減する。
  • ・サステナブル原材料の使用比率向上に向けた取組みを継続し、使用済みタイヤ由来の再生ゴム等のリサイクル原材料を適用した商品を順次市場投入していくことで、天然ゴムの消費量を低減する。
  • ・天然ゴムの生産現場における課題(森林減少、地域住民の権利侵害等)に対し、サプライチェーン全体で解決策を講じることにより、安定した天然ゴム調達を実現する。具体策として、GPSNRの掲げる「持続可能な天然ゴムの原則」を踏まえ、当社は「持続可能な天然ゴムの調達方針」を策定、公表し、全サプライヤーへの周知を図るとともに、その実現のために公平で客観的なCSR評価を第三者専門機関に依頼している。また、各サプライヤーのサプライチェーン管理に関する取り組みの積極的な活用を検討している。
  • ※GPSNR(Global Platform for Sustainable Natural Rubber):持続可能な天然ゴムのためのグローバルプラットフォーム

2.カーボンプライシングメカニズム 【リスク】

属性 気候関連事象
/事業への
財務的影響
影響額
/発生年度
算定方法 対応策
政策 カーボンプライシングの導入
カーボンプライシングの導入により、CO₂の排出に対するコストが上昇する。
約5億円
(中期:2030年)
CO₂削減目標未達分×炭素税
  • ・CO₂削減目標未達分は、2030年時点の当社CO₂目標削減量が仮に10%足りなかった場合の未達量。
  • ・炭素税はIEAが公表する2050年Netゼロに向けて想定される2030年時点の先進国向け炭素税。
  • ・天然ゴム調達量増加割合は、大規模洪水が発生した年から2030年までの調達量における推定増加割合。
  • ・当社グループにて、組織内外での事業活動及び製品を通じた効率的なエネルギー利用により、CO₂の削減を継続する。
  • ・CO₂削減への対策としては、ICP(社内炭素価格)を活用した製造拠点の再エネ調達、燃料転換、および設備更新を進めていく。
約57億円
(中期:2030年)
CO₂排出量×炭素税
  • ・CO₂排出量は、2030年時点の当社目標CO₂排出量。
  • ・炭素税はIEAが公表する2050年Netゼロに向けて想定される2030年時点の先進国向け炭素税。

リスク管理

TCFD対応を主管する経営管理本部、サステナビリティ委員会を主管する経営基盤本部 ESG推進部、脱炭素タスクフォースを主管する環境安全推進本部 環境衛生推進部を中心に、気候関連リスクの特定・評価を実施し、サステナビリティ委員会での審議を経て、当社としての気候関連リスクを評価します。
サステナビリティ委員会の脱炭素タスクフォースを通じて、各国のGHG排出量削減目標(再生可能エネルギー導入目標を含む)や自動車の燃費規制、ガソリン車の新車販売禁止などの規制要件を注視するとともに、各リスクへの対応を主管部に促し、進捗管理を行っています。

指標と目標

気候関連の指標

気候関連の目標

  • ・温室効果ガス(GHG)排出削減目標
  • ※2021年11月サステナビリティ委員会で決定、12月経営会議で承認
  • ※2022年2月15日公表
Scope1、Scope2 GHG排出量:2030年に2019年度比46%の削減、2050年にカーボンニュートラルをめざす。
Scope3 GHG排出量原単位:タイヤ1本あたりのGHG排出量について、2030年時点において2019年比20%の削減貢献をめざす。
  • ※マイルストーンとして、Scope1、Scope2 GHG排出量:2025年に2019年度比25%の削減をめざす

TCFDへの今後の対応

当社は今後、TCFD提言への対応として、シナリオ分析を更に精緻化することでリスク・機会の定量的なインパクトの把握を図るとともに、対応策の検討、立案及び実行に向け取り組んでいきます。
また、今後もステークホルダーの皆様に対して、TCFD提言に沿った開示を適時に行っていきます。

取り組み:温室効果ガスの排出削減

エネルギー消費量の削減

当社グループは気候変動の緩和に貢献するため、組織内外において事業活動に要するエネルギーの効率的利用によるエネルギー消費量の削減を進めています。また、気候変動への適応、あるいは緩和に貢献する新製品・新技術の開発に取り組んでいます。

2019年〜2023年の実績はこちらをご参照ください

組織外のエネルギー消費量(輸送時のエネルギー消費量)

2019年〜2023年の実績はこちらをご参照ください

エネルギー原単位

2019年〜2023年の実績はこちらをご参照ください

エネルギー消費量の削減事例

  • 配管補修、高効率設備の導入によるエネルギー使用効率向上
  • エネルギー転換による消費効率向上
  • 空調・照明の使用改善によるエネルギー消費量削減

仙台工場では、2023年7月から加硫機及び配管の保温強化により、工場から排出されるCO₂を年間251t削減しました。

製品(低燃費タイヤ)使用時のエネルギー必要量の削減

2019年〜2023年の実績はこちらをご参照ください

取り組み:温室効果ガスの排出削減

温室効果ガス(GHG)の削減

温室効果ガス(GHG)の排出は気候変動の主な原因とされており、当社グループでは組織内外での事業活動および製品を通じて、GHGの削減を進めています。
生産量の増加とともにエネルギー使用量も増加しますが、Scope1、2への対策として、工程の配管補修や高効率設備の導入によるエネルギー使用効率の向上、自動運転化や空調・照明の使用改善によるエネルギー消費量の削減、温室効果ガスの排出がより少ない燃料への転換等を進めています。さらに国内工場からフォークリフトの電動化を進めています。国内工場では再エネ電気の調達を行っており2023年は17台の電動化を進め年間421tの削減につながりました。順次電動化を進めて行きます。桑名工場ではボイラーのA重油から天然ガスへの燃料転換により364tのCO₂削減を行いました。
また、Scope3への取り組みとしては、タイヤ1本あたりのGHG排出量について、2030年時点で2019年比20%の削減貢献をめざしています。(一社)日本自動車タイヤ協会の「タイヤのLCCO₂算定ガイドライン Ver. 3.0.1」に基づき、当社グループのバリューチェーンにおけるGHG 排出量を算定した結果、カテゴリー11「製品の使用段階」におけるGHG 排出量が全体の80%以上を占めています。同ガイドラインによれば、低燃費タイヤは汎用タイヤと比べ、タイヤ使用時(自動車走行時)の CO₂排出量を、PCR(乗用車用タイヤ)で95.4㎏ CO₂e/ 本、TBR(トラック・バス用タイヤ)で879.0㎏CO₂e/ 本に削減が可能です。技術部門では、タイヤの燃費性能の向上に向けて、転がり抵抗の低減や軽量化に向けた技術開発を進め、商品企画部門と連携して、中長期的に、タイヤのモデルチェンジごとに低燃費性能をグレードアップさせていく計画です。2023年時点で、PCRに関して、2019年比1.5%の削減、削減貢献量は94.8千ton-CO₂eとなっています。

温室効果ガス(GHG)排出量

2019年〜2023年の実績はこちらをご参照ください

温室効果ガス(GHG)排出原単位(t-CO₂/百万円)

2019年〜2023年の実績はこちらをご参照ください

第三者検証について:

当社グループでは開示する情報の正確性、信頼性を確保するため、2023年度の実績データに対し、第三者機関による検証を受けています。

  • 検証対象範囲:TOYO TIRE株式会社および関係会社のうち114事業所*におけるエネルギー起源CO₂ Scope1総量、Scope2総量、取水量総量、取水量内訳、排水量総量、排水量内訳
  • 検証期間:2023年1月-2023年12月
  • 検証基準:ISO14064-3:2006、関連法令、及び検証機関の手順による
  • 第三者機関:SGSジャパン株式会社
  • *TOYO TIRE株式会社(本社、仙台工場、桑名タイヤ工場、桑名自動車部品工場、兵庫事業所明石工場、基盤技術センター、タイヤ技術センター、自動車部品技術センター、タイヤテストコース、冬季タイヤテストコース、東京事務所、広島事務所、関東配送センター、関西配送センター)、福島ゴム株式会社、綾部トーヨーゴム株式会社、オリエント工機株式会社(本社、仙台支社、六甲支社)、株式会社トーヨータイヤジャパン(87事業所)、TOYO AUTOMOTIVE PARTS (USA), INC.、TOYO TIRE NORTH AMERICA MANUFACTURING INC.、東洋橡塑(広州)有限公司、通伊欧輪胎張家港有限公司、通伊欧輪胎(諸城)有限公司、TOYO TYRE MALAYSIA SDN BHD、TOYO RUBBER CHEMICAL PRODUCTS (THAILAND) LIMITED、TOYO TIRE SERBIA D.O.O.

第三者機関の検証意見書はこちらをご参照ください

取り組み:クリーンエネルギーの利活用拡大

当社グループは、2022年下期より、生産拠点を中心に、購入電力について、再生可能エネルギー由来電力への切り替えを進めています。2023年末時点で、仙台工場、桑名工場及び米国タイヤ工場、ならびに国内事務・技術拠点の購入電力の100%を再生可能エネルギー由来に転換しました。今後も計画的に取り組みを進め、グローバルでの再生可能エネルギー由来電力比率を30年までに90%以上とすることをめざします。2023年末においては71.1%となっています。Ïu12414?た、自家消費としての太陽光発電システムの導入も進めています。2022年に稼働したセルビア工場の敷地内には、同国内最大規模となる太陽光発電システム(発電容量8.4MW)を設置し、年間10,150MWhの発電によって7,100tのCO2削減に寄与しています。2023年末には、マレーシアのタイヤ工場の工場棟の屋上96,000平米のスペースに設置した発電容量14.0MWの大規模太陽光発電システムが全面稼働しました。年間発電量は約19,000MWh、年間約12,000tのCO2を削減できる見込みです。国内でも、2023年末に基盤技術センターに太陽光発電Ïu12471?ステムを導入しました。年間発電量の約419MWhは国内拠点で最大となり、同センターで使用する電力量の約12%に相当します。これにより年間約128tのCO2を削減できる見込みです。

セルビア工場・上空からの遠景写真

セルビア工場の太陽光発電システム

マレーシアのタイヤ工場

マレーシアのタイヤ工場

基盤技術センター屋上

基盤技術センター屋上

SBTi※1に対する取り組み

2024年11月、当社は、2030年に向けて設定した温室効果ガス排出削減目標について、Science Based Targetsイニシアティブ (SBTi)より、地球温暖化を1.5℃以内に抑制するための科学的根拠に基づいたものと評価され、SBT認定を取得しました。
既に当社グループとして2021年に設定した温室効果ガス排出削減目標に向けて取り組んでいますが、今後はサプライチェーン全体での取り組みをより強化して推進します。
認定を取得したGHG排出削減目標は以下の通りです。

区分 目標
Scope1、Scope2
(当社の事業活動を通じた排出)
2030年までに総排出量を46.20%削減(2019年比)
Scope3 カテゴリー1
(購入した製品・サービスにおける他社の排出)
2029年までにサプライヤーの89.00%(2019年比)が科学的根拠に基づく目標を設定
  • ※1 SBTi:世界の平均気温上昇を1.5℃に抑えるという目標達成にむけたイニシアティブ