次世代モビリティの技術革新を続ける

取り組むべき課題

  • 次世代モビリティ社会に向けた製品、材料の開発・技術の強化
  • 製品、原材料リサイクル技術の構築
  • 環境負荷物質代替材料開発(マイクロプラスチック対応等)
  • 安全運転の支援(データ提供によるドライバーへの安全配慮)
  • 知的財産戦略

関与が大きいステークホルダー

  • 直接的:顧客(消費者)、お取引先 、従業員、研究機関
  • 間接的:株主・投資家、債権者、地域社会、NGO、業界団体

取り組み方針

当社グループが製品やサービスを通じて提供する価値は、新しい時代に求められるモビリティの進化を支えるものでなければならないと考えています。環境と調和する社会や、安全な運転を支援する社会の実現に貢献するため、技術革新に挑戦し続けます。

目標

サステナブル原材料※1の比率を2030年に40%、2050年に100%にすることをめざします。

  • ※1 当社はリサイクル原材料およびリニューアブル原材料をサステナブル原材料と定義しています

責任(2024年4月現在)

取締役 執行役員 技術統括部門管掌

活動推進体制(2024年4月現在)

技術統括部門を責任主管として、活動テーマの取り組みを推進しています。技術委員会が取り組みの全体を統括し、サステナビリティ委員会に進捗報告を行います。

活動推進体制図

苦情処理システム(窓口)

  • ホットライン相談窓口(内部通報制度)…【対象】役員、従業員、取引先
  • お客様相談室…【対象】顧客(消費者)、地域社会
  • Webお問い合わせフォーム…【対象】顧客(消費者)、株主・投資家、NGO

TOYO TIREの革新的なテクノロジー

取り組み:製品、原材料リサイクル技術の構築

資源を消費する社会から、資源が循環する社会への移行に貢献することは、モノづくりを行う企業としての責務と考えています。当社は製品に使用するサステナブル原材料※2の比率※3を2030年に40%、2050年に100%にすることをめざして研究開発を進めており、2023年時点で26%になっています。
今後も、使用済みタイヤ由来の再生ゴムや再生カーボンブラックなどのリサイクル原材料を使った製品を2025年までに順次市場投入していく計画です。また、バイオポリマー、バイオマス由来合成ゴム(バイオマス由来ブタジエンゴム、バイオマス由来スチレンブタジエンゴム)のようなリニューアブル原材料の使用量を高めるための技術開発にも取り組んでいます。これらは気候変動への影響の大きい石油由来原材料の使用量を低減することに繋がり、タイヤライフサイクルでのGHG排出量の削減にも寄与します。

  • ※2 当社はリサイクル原材料及びリニューアブル原材料をサステナブル原材料と定義。
  • ※3 比率は毎年末時点の生産品における重量ベース。
リサイクル 再生カーボンブラック 再生スチールコード 再生ビードワイヤー
リニューアブル バイオマス由来合成ゴム 植物由来オイル 籾殻灰シリカ
サステナブル原材料使用比率の目標と実績
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【TOPICS】

1 サステナブル素材使用比率90%のコンセプトタイヤを開発

当社は、2024年1月に、使用原材料の90%にサステナブル原材料を用いたコンセプトタイヤを開発しました。それまでの当社製タイヤにおけるサステナブル原材料の最高使用比率であった50%※4を飛躍的にしのぐ開発成果になっています。
このコンセプトタイヤには、リニューアブル原材料として、バイオマス由来ブタジエンゴム、バイオマス由来スチレンブタジエンゴム、籾殻灰シリカ、植物由来オイル、バイオマス由来ポリエステル繊維などを採用(全体の約60%)し、リサイクル原材料としては、富山大学との共同開発に成功したCO₂由来のブタジエンゴムをはじめ、再生カーボンブラック、再生ビードワイヤー、再生スチールコードなどを使用(全体の約30%)しています。
また、同タイヤは、タイヤのライフサイクル全体におけるGHG排出量の低減やEVの航続距離向上に大きく寄与する「転がり抵抗係数」を極小化し、タイヤラベリング制度※5で転がり抵抗値のレベル最上位である「AAA」相当の燃費性能を実現していることも特長の一つです。
今後、さらなる技術革新を進め、持続可能なモビリティ社会の実現に貢献する製品としての早期実用化をめざします。

※4 「ダカールラリー2024」への参戦車両へ供給し、実装着された「OPEN COUNTRY M/T-R」のサステナブル原材料使用比率
※5 タイヤラベリング制度:タイヤ業界(社団法人日本自動車タイヤ協会:JATMA)が業界自主基準として策定。
転がり抵抗性能とウェットグリップ性能の両性能ともある一定値を満たすタイヤを「低燃費タイヤ」として定義付けし、消費者への適切な情報提供を行うラベリング方法(表示方法)を明確にしたもの。

東京オートサロン2024に参考出品したコンセプトタイヤ
サイドデザインは「サステナブル」と「エレクトリック」をモチーフにしています

2 セルビア 国立ノヴィ・サド大学とサステナブル原材料の共同研究を開始

当社の欧州統括会社(Toyo Tire Holdings of Europe GmbH)はセルビア共和国の国立ノヴィ・サド大学とサステナブル原材料の研究開発を目的とした産学連携に関する協定を締結しました。同国に生産拠点を持つ企業として、国内の教育施策へ寄与することを期待し、産学連携のプロジェクトを通じて両国での技術振興を図っています。今回の共同研究グループが所属する工学部は、特にゴム技術の分野で国際的に高い評価を受けています。当社ではサステナブル原材料の使用比率を2030年に40%、2050年に100%とすることを目標に掲げており、農学部が発祥とされるノヴィ・サド大学の知見と地域の特徴を活かしたサステナブルな原材料の研究開発をスタートします。
今後、こうした産学連携による研究成果も生かしながらグローバルでのサステナブル原材料開発を促進していきます。

■共同研究内容
「サステナブル原材料の利用拡大に向けた取り組み」
1.セルビア由来植物を活用したリニューアブル原材料の開発
2.廃タイヤ由来のリサイクル原材料の開発

3 サステナブル原材料採用タイヤの開発に向けて CO₂を原料としたブタジエンゴムの合成に成功

国立大学法人富山大学との共同研究において、CO₂から高収率でブタジエンへ変換する触媒を開発し、タイヤの原材料の1つであるブタジエンゴムの合成に成功しました。地球環境に多大な影響を与える気候変動の主因の一つとされる、CO₂からブタジエンを合成する道筋をつけることに成功したことにより、従来の石油由来原材料を用いた場合に比べ、生成過程での環境負荷(CO₂排出量)の極小化に大きな成果が得られると考えられます。今後、量産化に向け開発を進め、2020年代末までにその実用化をめざすほか、その他の原材料でもサステナブル原材料へ置き換えるための研究開発を進めています。

取り組み: TRWP※6 の低減

TRWPはタイヤと路面の摩擦によって発生する粉塵で、タイヤのトレッド部材と道路舗装材からなる混合物です。環境中へ排出されることから、これを低減することはタイヤメーカーの重要な課題の一つであると認識しています。タイヤの摩耗は安全性や乗り心地、燃費にも影響することから、当社は素材開発や道路接地面のデザイン改良等を重ね、タイヤの耐摩耗性の向上に継続的に取り組んでいます。例えば、当社の材料設計基盤技術Nano Balance Technologyにおける「ナノ加工」の進化技術によって生み出されたNano Composite Polymer(カーボンブラックが高度に均一分散したゴム)に最適なコンパウンドを設計することで耐摩耗性を向上させています。

当社はまた、業界団体のTIP※7や(一社)日本自動車タイヤ協会に参画し、まだ十分に解明されていないTRWPの研究および影響緩和の検討を進めています。業界としての取り組みに貢献しながら、業界活動を通じて得られた知見等を自社の取り組みにも活かし、TRWP低減対応を進めていきます。

  • ※6 Tire and Road Wear Particles(タイヤ・路面摩耗粉塵)
  • ※7 WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)のセクタープロジェクトの一つである、Tire Industry Project(タイヤ産業プロジェクト)

取り組み:安全運転の支援(データ提供によるドライバーへの安全配慮)

当社は、自動車が走行する際、唯一、路面と接触しているタイヤから各種情報を吸い上げるセンシング技術について開発を進め、タイヤそのものを「情報取得デバイス」として活用することで新たな付加価値を創造するという構想を進めています。タイヤに装着したセンサーが検知する諸情報を演算処理し、果たすべきタイヤ性能の限界値を導き出すというセンシング技術によって、走行中のタイヤが、路面状態に対して求められる性能範囲に応じた「タイヤ力※8 」を発揮できているかをデータとして把握するとともに、可視化することができるようになりました。様々な状況の路面計測や、サーキットでのアプリケーションの検証等の実証実験を進めており、自動運転などに求められる安全・安心につながるシステムの一部として貢献できるよう開発に取り組んでいます。

  • ※8 当社が独自で定めた呼称で、タイヤからインプットされる空気圧や温度、路面判別、荷重、摩耗、異常といった情報から推定される、実際のタイヤパフォーマンスを指します。タイヤ力をリアルタイムに表示しドライバーが視認できるアプリケーションソフトの開発を行いました。

センサを装着しての路面計測の様子

走行結果のタイヤ力を可視化したアプリケーション画面

取り組み:知的財産戦略

当社では環境に配慮した社会や安全な車社会の実現に向け、絶え間ない技術革新と商品開発に取り組んでいます。また、それら取り組みを通して生まれた新技術・新商品はお客さまの手元に届き、使用されて初めて社会的価値あるものへと昇華されると考えています。リサイクル原材料やリニューアブル原材料および低燃費化を実現するゴム配合等、研究開発の成果の結晶である商品を、お客様に安心して使用していただくための技術的裏付けとなる知的財産権の取得を進めています。これら継続的な知的財産への取り組みは次世代モビリティ社会に向けた価値創出に寄与し、当社プレゼンスの確保にもつながるものと考えています。

【TOPIC】第13回全社技術開発発表会を開催

当社では、実用化を念頭に置き、顧客(消費者)や取引先のニーズ、生産部門や販売部門からの声に応える技術開発を行っています。当社の最先端技術やその取り組み成果を発表し、経営層へ報告する機会として、「全社技術開発発表会」を毎年開催しています。
2023年はオンラインにて開催し、「独自性、論理性、将来性、開発スピード、プレゼン力」の5つの観点から審査を実施しました。今後も継続して実施し、当社が社会から求められるニーズに応え続けられるよう、さらなる技術向上に努めていきます。

2023年受賞各賞のテーマ

最優秀技術開発賞

BEV(Battery Electric Vehicle)向けバーチャル開発への取り組み

OEMでは車両開発における省コスト・省資源・開発期間短縮を目的に、バーチャル開発の導入検討が進んでいます。バーチャル開発とは、試作から性能評価までの過程をバーチャル(仮想・解析)で行う設計開発手法で、評価環境(タイヤ、車両、路面)をモデル化して、試作レスでタイヤ性能評価を実現することです。中でもノイズ性能はBEV向けタイヤに対してプライオリティが高く、OEMからも高い要求を求められています。そこで高周波領域のノイズを「パターン由来の音響入力」×「気柱管による音響伝達」に分解し、パターン走査解析と音響CAE(Computer Aided Engineering)の結果からノイズ特性を予測する技術を開発しました。

ユニーク賞

シリカ界面制御技術によるWET/RRバランス改良

タイヤの代表特性の一つであるウェットグリップ性能は、転がり抵抗性能と背反の関係にあるため、これらの両立を図りより高性能なタイヤを開発するには、それぞれの特性に及ぼす材料構造を特定し制御する必要があります。当社の材料基盤技術である「Nano Balance Technology(ナノバランステクノロジー)」で構築したナノスケールにおける構造解析技術を活用し、ゴム用補強材であるシリカの界面構造および分散状態の最適点を予測、これを実現するための新規化合物の開発に成功しました。

サプライズ賞

サステナブル原材料比率100%に向けた取り組み

当社マテリアリティに掲げた製品におけるサステナブル原材料比率(2030年40%、2050年100%)達成に向けた取り組みとして、サステナブル原材料比率50%のモータースポーツ用タイヤならびに同比率90%のコンセプトタイヤの開発を行いました。前者は、サステナブル原材料の使用比率を高めるために、加工法制御やMI技術を活用し、過酷な環境を走破するために必要なオフロード性能を有している点、後者は、独自のサステナブル原材料(CO₂ 由来ブタジエンゴムなど)を採用するなどして極限までその比率を高めつつ、転がり抵抗性能「AAA」相当を実現した点が主な特長です。