取り組むべき課題
- 次世代モビリティ社会に向けた製品、材料の開発・技術の強化
- サステナブル原材料の使用拡大
- TRWPの低減
- 安全運転の支援(データ提供によるドライバーへの安全配慮)
- 知的財産戦略
関与が大きいステークホルダー
- 直接的:顧客(消費者)、お取引先 、従業員、研究機関
- 間接的:株主・投資家、債権者、地域社会、NGO、業界団体
取り組み方針
当社グループが製品やサービスを通じて提供する価値は、新しい時代に求められるモビリティの進化を支えるものでなければならないと考えています。環境と調和する社会や安全な運転を支援する社会の実現に貢献するため、技術革新に挑戦し続けます。
目標
サステナブル原材料※1の比率を2030年に40%、2050年に100%にすることを目指します。
- ※1 当社はリサイクル原材料及びバイオベース原材料をサステナブル原材料と定義しています
責任者(2026年4月現在)
取締役 常務執行役員 技術統括部門管掌
活動推進体制(2026年4月現在)
技術統括部門を責任主管として、活動テーマの取り組みを推進しています。技術委員会が取り組みの全体を統括し、サステナビリティ委員会に進捗報告を行います。
お問い合わせ窓口
- ホットライン相談窓口(内部通報制度)…【対象】役員、従業員、取引先
- お客様相談室…【対象】顧客(消費者)、地域社会
- Webお問い合わせフォーム…【対象】顧客(消費者)、株主・投資家、NGO
TOYO TIREの革新的なテクノロジー
次世代モビリティ社会に向けた製品、材料の開発・技術の強化
[THiiiNK]~魅力ある商品を多くの皆様に届ける「新技術体系」
これまで当社が長年にわたり培ってきた各種技術のうち、「材料技術」「シミュレーション技術」「デザイン技術」の3分野は、当社の考える次代のタイヤづくりにおいて基軸となるコア技術です。
これらを統合的に体系として整理したのが新技術体系「THiiiNK」であり、当社は、今後開発するすべての製品に「THiiiNK」の技術体系を適用していく方針です。
[Nano Balance Technology]~次世代のライフスタイルに応える「材料技術」
当社はゴム材料の開発において、ナノスケールでの材料設計を可能にする独自の基盤技術「Nano Balance Technology」を活用しています。この技術は、「分析」「解析」「素材設計」「加工」の4領域を横断的に統合し、ゴム材料をナノ(分子)レベルで「観察」「予測」「機能創造」「精密制御」することで、理想的な材料設計を可能にするものです。
[T-MODE] ~お客様が求める高い性能を実現する「シミュレーション技術」
当社は1987年、国内タイヤメーカーとして初めてスーパーコンピューターを導入し、以来、継続的に最新機種への更新を重ねてきました。これは、シミュレーション技術をタイヤ開発における設計支援の中核として位置づけ、独自に積極活用してきたものです。2000年にはドライビングシミュレーションとタイヤシミュレーションを融合した設計技術「T-mode」を発表。さらに2019年には、CAE※2による従来の設計基盤技術にAI技術を統合し、設計精度とスピードを飛躍的に向上させた新「T-MODE」へと進化させました。
- ※2 Computer Aided Engineeringの略。コンピューター支援工学。製品設計・開発段階でコンピューター上に仮想モデルを作成し、物理現象をシミュレーション、解析する技術
[パターン設計技術]~機能性と意匠性の両立をさらに進化させる「デザイン技術」
当社は、性能とアグレッシブなデザインを兼ね備えたタイヤ製品の開発・生産・販売を通じて、北米市場において確固たるプレゼンスを築いてきました。 中でも、SUV向け主力ブランド「OPEN COUNTRY」シリーズは北米市場で高い評価を獲得しており、2016年に導入した国内市場でも高い好評を得ています。こうしたデザイン技術は、当社の競争力の源泉であり、ブランド価値向上にも大きく貢献しています。
取り組み:サステナブル原材料の使用拡大
資源を消費する社会から、資源が循環する社会への移行に貢献することは、モノづくりを行う企業としての責務と考えています。当社は製品に使用するサステナブル原材料の比率※3を2030年に40%、2050年に100%にすることを目指して研究開発を進めており、2025年時点で30%になっています。 今後も、使用済みタイヤ由来の再生ゴムや再生カーボンブラック、再生ビードワイヤーなどのリサイクル原材料、バイオマス由来合成ゴム(ISCC PLUS認証※4品)、籾殻灰シリカのようなバイオベース原材料の使用量を高めるための技術開発にも取り組んでいきます。これらは気候変動への影響の大きい石油由来原材料の使用量を低減することにつながり、タイヤライフサイクルでのGHG排出量の削減にも寄与します。
また、持続可能な製品の国際的な認証制度の一つであるISCC PLUS認証を2024年12月に取得、認証を取得した2工場ではマスバランス方式※5に準拠して認証原材料の取り扱いが可能となりました。今後も、認証品を含めたサステナブル原材料の活用、及びISCC PLUS認証拠点の追加を計画的に進めていきます。
- ※3 比率は毎年末時点の生産品における重量ベース。
- ※4 バイオマス原材料・製品やリサイクル原材料・製品がサプライチェーン上で適切に管理されていることを担保する第三者認証制度。
- ※5 特性の異なる原材料が混合される場合、ある特性を持つ原材料の投入量に応じて生産する製品の一部にその特性を割り当てる手法。
| リサイクル原材料 | バイオベース原材料 | |
|---|---|---|
|
主な
サステナブル 原材料 |
再生ゴム | 天然ゴム |
| 再生カーボンブラック | バイオマス由来合成ゴム | |
| 再生ビードワイヤー | 籾殻灰シリカ |
サステナブル原材料使用比率の目標と実績
【TOPICS】
1. サステナブル原材料使用比率96.5%のコンセプトタイヤを開発
当社は、タイヤの性能維持に不可欠でありながらもサステナブル素材へ置き換えることが難しい素材を代替していく技術の実現に注力し、環境性能と製品性能をさらに高次元で両立を図る取り組みを推進しています。
当社はこのたび、サステナブル素材の使用比率を96.5%まで高めたコンセプトタイヤを開発しました。2024年1月に発表したサステナブル素材使用比率90%を記録しているコンセプトタイヤシリーズに比して、今回、さらにその比率を6.5ポイント引き上げています。
タイヤに用いられるサステナブル素材は、天然由来など再生可能な「バイオベース原材料」と使用済みの資源を再利用した「リサイクル素材」の2種類に大別されますが、今回のコンセプトタイヤには、「バイオベース原材料」を全体の61.5%に使用しています。バイオマス由来ブタジエンゴムやバイオマス由来スチレンブタジエンゴム、バイオマス由来ポリエステル繊維、籾殻灰シリカ、植物由来オイルなどを採用しています。
また全体の35%を占めるリサイクル素材には、富山大学との共同開発で成功したCO2由来ブタジエンゴムをはじめ、再生カーボンブラック、再生ビードワイヤー、再生スチールコードなどを使用しています。
今後も、市販用タイヤへの実装に向け、引き続き、技術革新と研究開発に取り組んでいきます。
サステナブル原材料使用比率96.5%のコンセプトタイヤ
2. 2027年にセルビアR&Dセンターを稼働
当社では今後、中計'26の方針に基づき、高機能設計を軸とした競争優位の確立に加え、顧客価値起点での商品具現化をより一層強化し、「技術の高度化と価値創出の社会実装」を加速させることを命題として、技術開発のさらなるステージアップに取り組んでいく方針です。その鍵の一つを握る「加工技術」の強化については、欧州R&D機能における重点技術テーマの一つとして位置づけています。これを受け、セルビア共和国インジヤ市の当社生産拠点敷地内にR&D施設棟を新設し、欧州における新たなR&Dセンターとして2027年1月の稼働を予定しています。
また、現在ドイツに所在するR&D機能については、2026年中を目途に本センターへ移管する計画としており、欧州における研究開発体制の集約・高度化を図ります。これにより、グローバルでのR&D連携を一層強化し、日本・北米・欧州による三極体制のもと、次世代技術の創出及び迅速な社会実装を推進していきます。
新設するセルビアR&Dセンターでは新配合・新素材の開発及び混合技術の高度化により、製品性能はもとより生産性のさらなる向上を図ります。また、工場敷地内に敷設しているテストコースを活用することで実車試験を即座に実施でき、開発サイクルの短縮と新商品開発の迅速化を実現していきます。
セルビアR&Dセンター
3. トラック・バス用タイヤの状態管理デジタル・アプリケーション「Tire SAPRI」を開発
トラック・バス用タイヤの使用環境や使用状態を把握、管理するデジタル・アプリケーション「Tire SAPRI(タイヤサプリ)」を開発し、一部のお客さまに対してテストマーケティングを展開しています。タイヤ摩耗状態の予測による表示や空気圧・温度のモニタリングによる異常通知など、独自のデジタル・データ処理技術に基づき、物流事業者の車両運行上の効率的な管理や運行トラブルの未然防止など、ソリューションによる新たな価値創出を行っていきます。
取り組み:TRWP※6の低減と6PPD※7対応
TRWPはタイヤと路面の摩擦によって発生する粉塵で、タイヤのトレッド部材と道路舗装材からなる混合物です。環境中へ排出されることから、これを低減することはタイヤメーカーの重要な課題の一つであると認識しています。タイヤの摩耗は安全性や乗り心地、燃費にも影響することから、当社は素材開発や道路接地面のデザイン改良等を重ね、タイヤの耐摩耗性の向上に継続的に取り組んでいます。 また、当社は業界団体のTIP※8やJATMA※9に参画し、まだ十分に解明されていないTRWPの研究及び影響緩和の検討を進めています。業界としての取り組みに貢献しながら、業界活動を通じて得られた知見等を自社の取り組みにも活かし、TRWP低減対応を進めていきます。 また、TRWPには世界のタイヤ産業で広く使用されている老化防止剤6PPD※7も含まれています。6PPDが酸素やオゾンと反応することにより形成される可能性のある変性生成物である6PPD-キノンがある種の魚類に対して影響を与えていると指摘する米国での論文がありますが、当社もタイヤ業界の一員として、さまざまな研究や代替品評価を進めています。
- ※6 Tire and Road Wear Particles(タイヤ・路面摩耗粉塵)
- ※7 N-(1,3-ジメチルブチル)-N'-フェニル-p-フェニレンジアミン、タイヤ表面のシワ、ひび割れを防ぐ老化防止剤
- ※8 WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)のセクタープロジェクトの一つである、Tire Industry Project(タイヤ産業プロジェクト)
- ※9 (一社)日本自動車タイヤ協会
取り組み:安全運転の支援(データ提供によるドライバーへの安全配慮)
当社は、自動車が走行する際、唯一、路面と接触しているタイヤから各種情報を吸い上げるセンシング技術について開発を進め、タイヤそのものを「情報取得デバイス」として活用する構想を進めています。自動運転などに求められる安全・安心につながるシステムの一部として貢献できるよう開発に取り組んでいます。
センサを装着しての路面計測の様子
取り組み:知的財産戦略
当社では環境に配慮した社会や安全な車社会の実現に向け、絶え間ない技術革新と商品開発に取り組んでいます。また、これらの取り組みから生まれた新技術・新商品は、使用されて初めて社会的価値を発揮するものになると考えています。リサイクル原材料やバイオベース原材料の活用、ならびに低燃費化に寄与するゴム配合、パターン・構造設計といった研究開発の成果を結集した商品を、お客様に安心してご使用いただくため、その技術的裏づけとなる知的財産権の取得を積極的に進めています。さらに、これらの知的財産権の価値を可視化するための取り組みも並行して推進しています。こうした継続的な知的財産への取り組みは、次世代モビリティ社会に向けた価値創出に寄与するとともに、当社プレゼンスの確保にもつながるものと考えています。
【TOPIC】第15回全社技術開発発表会を開催
当社では、実用化を念頭に置き、顧客(消費者)や取引先のニーズ、生産部門や販売部門からの声に応える技術開発を行っています。当社の最先端技術やその取り組み成果を発表し、経営層へ報告する機会として、「全社技術開発発表会」を毎年開催しています。 2025年はオンラインにて開催し、「独自性、論理性、将来性、開発スピード、プレゼン力」の5つの観点から審査を実施しました。今後も継続して実施し、当社の独自技術として商品化・実用化につなげ、社会からニーズに応え続けられるよう、さらなる技術向上に努めていきます。
2025年受賞各賞のテーマ
最優秀技術開発賞
再生可能材料を活用した新規軟化剤の開発
持続可能な社会の実現に向け、当社は材料設計と製造技術の高度化を軸に取り組みを進めています。特に、製品性能の向上と環境負荷低減の両立を目指し、ゴム材料の構造最適化に継続的に取り組んできました。その結果、柔軟性と強靭性を兼ね備えたゴム構造が耐摩耗性の向上に有効であることを見出し、さらにこの知見に加え、再生可能資源由来の機能性材料を活用し、従来の石油由来材料の一部代替可能性を確認しています。現在は実用化に向けた検証を進めており、資源使用の最適化を図るとともに、性能の最大化と環境影響の最小化を目指します。
ユニーク賞
大径WLTR成型機開発における取り組み
市場要求が多い大外径・高吋タイヤへ適用した生産設備に、顧客評価が高いアグレッシブなデザインのWLTRタイヤの独自製造技術を融合し、高品質を維持しつつ生産能力を向上する技術を開発。IoTや最新の設備管理システムも同時に開発し、これらを生産設備として展開することで、より高いレベルで顧客要求に応えることが可能と考えています。
サプライズ賞
MI進化とタイムリーな配合アップデートによる欧州雑誌推奨獲得への貢献
MI(マテリアルズ・インフォマティクス)※10を活用した材料設計により、開発スピードと性能の両立を実現しました。従来よりも広い配合領域で物性予測が可能となり、新規材料の迅速な選定と最適配合の設計を実現しています。新配合では特にウェット性能を大きく向上させつつ、転がり抵抗やドライ性能など他の主要性能も高いレベルで維持・改善しました。その結果、欧州市場で重視される第三者評価である雑誌テストにおいて順位向上が見込まれ、推奨獲得につながる成果が期待されます。今後も更なる性能向上と製品競争力強化に継続的に取り組んでいきます。
- ※10 AIやデータ解析を活用して材料の性能を予測し、研究開発を効率化する手法
