モノづくりの根幹(品質と安全性)を守り抜く

取り組むべき課題

  • 品質向上の取り組み
  • 顧客満足度の向上
  • MES導入による工程内品質の見える化
  • トレーサビリティを確保する個体管理システム(RFID)の実現
  • タイヤ安全啓発活動の推進

関与が大きいステークホルダー

  • 直接的:顧客(消費者)、取引先、従業員、研究機関
  • 間接的:株主・投資家、債権者、地域社会、NGO、業界団体

取り組み方針

「高い品質と安全性を有し、社会に役立つ製品とサービスを提供」することをモノづくりの原則に掲げ、製品の安全に関する基本理念と行動基準を「TOYO TIREグループ製品安全に関するグローバル方針」に定めています。同方針には、製品の企画、開発、設計の段階から生産、販売、使用、さらには使用後に至るまでバリューチェーン全体で製品の安全と地球環境保護に配慮することを明示しています。
生産拠点を中心に、IATF16949(一部生産拠点はISO9001)をベースとした品質マネジメントシステムを運用し、リスク対策を講じます。

TOYO TIREグループ製品安全に関するグローバル方針

1.基本理念

私たちは、サステナブル経営を推進する責任あるグローバル企業として、環境価値、経済価値、社会価値をさらに高めていくための企業活動を通じて、安全だけでなく、健康に害の無い、地球環境保護を第一とした持続可能な社会づくりに努力、貢献し続けます。

2.行動基準

  1. 当社グループは、人と地球のよりよい共生関係を創り出して持続的成長を目指す企業として、環境にやさしく安全で信頼される製品・サービスをお客さま、社会に提供します。
  2. 当社グループは、製品の安全を確保するために必要な社内外の法規・規格・基準・規定を遵守し、それらに適合することはもとより、製品のより高い安全性および環境負荷低減を目指します。
  3. 当社グループは、製品の企画、開発、設計の段階から生産、販売、使用、さらには使用後に至るまでの製品の安全と地球環境保護に配慮します。
  4. 当社グループは、製品の企画、開発、設計の段階から生産ロスの無いものづくりを目指します。
  5. 当社グループは、製品の企画、開発、設計の段階からリサイクルに配慮します。
  6. 当社グループは、製品の安全と環境保護について、従業員各層の教育・啓発を行い、製品の安全と地球環境保護意識の高揚を図ります。
  7. 当社グループは、お客さまに対して、製品の適正な使用法、誤使用の防止について、周知・啓発を図るとともに、お客さまのご意見・ご要望には真摯に耳を傾けて製品に反映させ、安全で健康に害の無い製品提供と地球環境保護推進の徹底を図ります。

品質マネジメントシステムの運用状況

ISO9001認証登録(2023年5月末時点)

生産拠点14事業所(TOYO TIRE株式会社3事業所*1、関係会社11事業所)、販売拠点(関係会社)4事業所

  • *1 桑名工場はタイヤ工場、自動車部品工場のそれぞれ(2事業所)で独立して認証を取得しています。

IATF16949(旧ISO/TS16949)認証登録(2023年5月末時点)

生産拠点9事業所(TOYO TIRE株式会社3事業所、関係会社6事業所)

責任(2023年4月現在)

  • 研究開発:取締役 執行役員 技術統括部門管掌
  • 生産技術:執行役員 生産統括部門管掌
  • 製品・サービスの提供:取締役 執行役員 販売統括部門管掌
  • 品質保証:執行役員 品質環境安全統括部門管掌

活動推進体制(2023年4月現在)

品質環境安全統括部門を責任主管として、活動テーマの取り組みを推進し、サステナビリティ委員会に進捗報告を行います。

活動推進体制図

苦情処理システム(窓口)

  • ホットライン相談窓口(内部通報制度)…【対象】役員、従業員、取引先
  • お客様相談室…【対象】顧客(消費者)、地域社会
  • Webお問い合わせフォーム…【対象】顧客(消費者)、株主・投資家、NGO
  • 上記を窓口とした対応のほか、製品・サービスに関しては当社技術サービス部および、当社グループの販売会社や販売代理店が相談や苦情の受け付けを行っています。

取り組み:品質向上の取り組み

開発・生産プロセスの向上

当社グループはモノづくりにおいて、事業プロセスの上流で品質向上を達成することが重要と考えており、市場投入した製品・サービスに対する品質のみならず、開発・生産プロセスにおいても質の向上をめざしています。
当社グループが新規に開発している製品については、製品企画から生産準備段階に至るまでの間、その節目ごとに行われるデザインレビューを品質保証部門がチェックし、製品および製造プロセスに対して確実な品質設計がなされるように活動しています。
また、当社タイヤ技術センターでは、業務内で発生する可能性のあるリスクとしてヒューマンエラーや不正を防止するために、定型業務を自動的に処理するソフトウェアであるRPA(Robotic Process Automation)を導入し、業務の効率化を進めています。

各国の品質規格への対応

気候変動リスクの高まり等を背景に自動車の燃費向上やCO₂排出量削減を促進するための環境性能・品質に関する規制の導入が急速に進むなど、複雑化する各国の品質関連法規に漏れなく対応するため、当社グループ全体で品質規格の対応強化を図っています。年に1回、タイヤ、自動車部品の各事業において、国内外の生産拠点の品質保証責任者・関係者によるグローバル品質保証会議をそれぞれ開催しています。本会議では、各拠点における製品品質、工程の品質システム改善、取引先から要求される品質に関する取り組みなどを共有し、議論しています。また、当社が開発するタイヤの実験および評価を行う日本国内の4拠点では、2013年にISO/IEC17025(試験所および校正機関の能力に関する一般要求事項)への初回認定を受け、以降、試験精度や信頼性の向上に取り組み、継続して規格要求事項に適合した試験運営を実施しています。

ISO/IEC17025認定書

品質規格への対応の例

  • 現地での情報収集
  • 業界団体への活動参画を通じた提言活動
  • 規制機関との意見交換
  • 最新法規動向の情報配信
  • 法規制に関する説明会の開催

販売会社におけるサービス品質向上の取り組み

当社グループのタイヤ販売会社では、顧客(消費者)が信頼・安心・満足して当社製品を選んでいただけるよう、営業担当者およびフロント業務担当者の顧客対応力の強化やサービス担当者の作業スキル向上に努めています。
例えば、日本国内では、株式会社トーヨータイヤジャパン及び自主系販売会社において、営業、サービス等の各職種に必要なサービス品質を備えた人財を育成するための職種別教育を展開しています。さらに顧客に対して製品価値をわかりやすく、正しく伝える意識を日頃から持ち、実践するスキルを養うため、営業担当者を対象とした「セールスマン研修」やフロント業務担当者を対象にした「フロント研修」を開催しています。
また、サービス担当者を対象とした「トラック・バス タイヤ作業コンテスト」では、昨今社会問題となっている脱輪事故などを背景に、タイヤ交換作業・点検・アフターサービスを担うサービスマンの技能・サービスの向上を主な目的として、全国各地から選抜されたサービスマンが技術を競い合っています。当コンテストを通じて、自身の業務がお客さまの安全・安心のみならず社会課題の解決にも貢献していることをあらためて認識することができ、従業員のやりがいの創出やモチベーションの向上にもつながっています。
引き続き、新型コロナウイルス感染症対策をとりながら、リモートと訪問のハイブリッドでお客さまへの各種対応に取り組んでいます。

TBコンテストの様子。トラックのタイヤ作業を審査員がチェックしている。トラック・バス タイヤ作業コンテストの様子

取り組み:顧客満足度の向上

品質・顧客満足度の維持改善

当社グループはモノづくり企業として、製品・サービスを通じて顧客(消費者)、そして社会とつながっていることを理解し、製造現場では製品品質の維持向上のため、日々努力と研鑽を重ねています。またその他のすべての職場においても「企業人としての品質」の向上を意識し、お客さまを第一に考えた製品・サービスの提供に努めています。
また、販売中製品の市場における製品満足度を継続的に調査し、お客さまのご要望を設計現場、製造現場にフィードバックしています。
例えば、当社グループでは、現場目線での「気づき」をもとに品質管理水準を自ら主体的に高めるQCサークル活動を50年以上行っています。製造現場で始まった活動は今では販売部門にも広がり、全拠点でおよそ300のサークルが存在します。いずれのサークルでも課題解決のためメンバーそれぞれの経験と知見を持ち寄り、現状把握・目標設定・活動計画・課題解析を行うことで品質改善を重ねています。
そして、毎年「全社QCサークル大会」を開催しています。国内外のサークル代表者が本社で、品質改善だけでなく、職場のムダやロス排除に向けた日頃の取り組みについて発表を行い、グローバルでの情報交換とともに、相互研鑽を図っています。2022年は2021年と同様に、各拠点での代表サークルの発表をリモートで参加者が視聴、審査員が審査する形式で開催いたしました。今後も、工場の現場力アップや顧客満足度向上を目指し、QCサークルの活動支援に取り組んでいきます。

消費者の声に対する取り組み

当社グループに日々寄せられている顧客(消費者)の貴重なご意見、ご提案一つひとつは、当社グループへの期待が込められており、製品・サービスを改善する機会であると考えています。2022年に国内お客様相談室へ寄せられた相談件数は2,669件でした。電話やWebサイトから寄せられた顧客からのご相談に対しては、お客様相談室が「正確さ」と「わかりやすさ」を第一に説明を行っています。
また、寄せられたご相談やお問い合わせはその内容を分析し、社内の関係部門に提言することで、製品およびサービスに対する「利用しやすさ」の向上につなげています。例えばSUV向けとして市場で人気となっているOPEN COUNTRYシリーズの開発や、カタログおよびWebサイトの見やすさ改善に役立ててきました。
苦情のお申し出に際しては、迅速、かつ顧客にご満足いただける対応に努め、問題やご不満を解決することで、顧客と良好な関係を築き、またその関係を維持できるように、当社グループの販売部および技術サービス部門と連携して真摯に取り組んでいます。

取り組み:MES*2(製造実行システム)導入による工程内品質の見える化

製造工程品質データの見える化とデータに基づく工程改善の取り組み

当社グループは、製造工程において事前に不具合発生を予知予見し、未然防止する品質保証体制の構築をめざしています。タイヤ製造工程に自動計測機器を導入し、生産設備から品質、生産に関わる情報をデジタルデータとして収集、可視化するシステムの導入を進めています。これにより、製造プロセスごとに品質が保証され、収集したデータの分析、監視により工程の傾向変化を検知することが可能となります。2022年に開所した新しい生産拠点であるセルビア工場でのMESの運用を皮切りに、他の生産拠点への導入を進めるとともに、データ活用促進のための人財育成や企業文化醸成にも取り組んでいます。

  • *2 MES: Manufacturing Execution Systemの略。

【TOPIC】セルビア工場を開所

当社は2022年12月に欧州に初めての自動車用タイヤ生産工場を開所しました。
セルビア工場は、ERP、MESをはじめとした最新技術の導入によって、工程を見える化し、高い生産性を有する設備を高精度に連携させることで、生産管理体制を高次に最適化していくスマートファクトリーです。
2019年、ドイツにR&Dセンターを新設し、最先端原材料の探索や調査、車両・市場の最新情報の収集、そして構造・形状・パターンといった各設計過程における高性能技術開発の研鑽などを続けています。これらの最先端技術を生かして、EV化をはじめ市場インサイトに応える高性能で競争力のあるタイヤを生産していきます。
また、工場棟に隣接して直線距離720m、周回1,690mとなるテストコースを敷設しています。こちらで実車装着での走行テストを行ない、欧州地域で細かく定められている法規制認証に対応した評価をスピーディーに実施することで、魅力ある製品のよりタイムリーな市場展開が叶うようになります。
なお、敷地内には、同国内最大規模となる太陽光発電システム(発電電力容量8.4MW)を設置、年間10.15GWhの発電電力をまかない、同7,100トンのCO₂の削減にも寄与していきます。
欧州地域での地産地消を進める一方、主力市場である北米をも主要ターゲットとして供給していきます。
当社の欧米地域における新しい事業価値をもたらす当工場で、今後、市場競争力の高い商品供給を図り、より多くのお客様に喜ばれるモノづくりを進めていきます。

セルビア工場・上空からの写真
セルビア工場の全景
セルビア工場タイヤテストコースの写真
タイヤテストコース

取り組み:トレーサビリティを確保する個体管理システム(RFID*3)の実現

タイヤ業界では、タイヤデータの標準化や共有を目指す国際的な非営利団体組織であるGDSO(Global Data Service Organization for Tires and Automotive Components)が2022年5月に設立されました。当社ではRFID搭載タイヤの技術の確立とともに、取得したタイヤデータの活用の検討を進めています。

  • *3 Radio Frequency Identifierの略

取り組み:タイヤ安全啓発活動の推進

当社グループは、定期的なタイヤの点検が安全性につながることを消費者の皆様方に啓発していくことは、タイヤメーカーおよび販売会社の使命であると考えており、毎年、タイヤの安全啓発イベントを開催しています。

【TOPIC】2022年タイヤ安全啓発活動を実施

当社グループでは、ドライバーの皆さまにタイヤを適正に使用いただくための啓発活動は大事な使命の一つであると考えています。また、コロナ禍に遭遇し、移動手段として自動車の利用ニーズは高まっており、定期的なタイヤの空気圧点検や雨天時の走行における注意など、改めて安全への意識を高めていただく必要があることから、当社および国内販売子会社である株式会社トーヨータイヤジャパンは、タイヤ安全啓発活動を展開しています。
2022年は小型カーディーラーの方1,931名を対象とした安全啓発活動を実施したほか、全国6ヵ所で1000名以上の一般ドライバーの方に参加いただきました。
当社が独自にソフト開発したドライブシミュレーターを用いて、すり減ったタイヤと新品タイヤでの雨の日におけるブレーキの効きの違いやバーストの疑似体験、タイヤの空気圧の違いによる操縦安定性の比較、ハイドロプレーニング現象が発生した際の走行などを体感いただきました。体験いただいた方から「タイヤの安全に対する意識が高まった」「溝や空気圧などを今後もっと確認しようと思った」などの反響があり、本活動がタイヤの安全性への意識の高まりに繋がっていることを確認しました。
引き続き、これからもドライブシミュレーターを活用し、タイヤへの関心をさらに高め、タイヤを適正に使用いただくよう啓発する取り組みを継続的に行っていきます。

ドライブシミュレーター体験の様子ドライブシミュレーターの様子