新型コロナウイルス感染拡大防止への対応、
そして、サステナビリティの追求
新型コロナウイルス感染拡大により、地域間の人の移動は制限され、グローバルにまたがるサプライチェーンの分断をはじめ、
世界経済は大きなマイナスインパクトを受けて、企業活動にもさまざまな変容が求められました。
当社グループは、従業員とその家族、関係先の安全と健康を第一優先とすること、また、事業を継続して社会に役立つことを方針として施策を打ち出し、未経験のパンデミックに対峙してきました。
2021年8月現在、未だにコロナ禍の収束は見えませんが、この不可逆的な状況の中で、2020年以来、社会のサステナビリティを見据えつつ、自社のサステナビリティをも守り抜くべく、取り組んできた足跡があります。
感染防止対策と事業継続対応
当問題は、当社が危機管理規程に定める「重大な感染症・伝染病」事象に該当することから、2020年1月に開催した緊急対策会議を経て、2月より緊急対策本部を設置しました。政府や自治体の要請に協力しながら、各方面より必要な情報を収集し、対応の議論を重ね、局面ごとに感染拡大防止策を展開、徹底しています。従業員に感染の疑いが生じた場合には、報告を求めるとともにプライバシーと情報管理を厳重に行い、社内拡散の有無を確認するなど速やかに対応しています。
3月からは、社長が各機能組織の責任者である統括部門管掌を集め、事業への影響や各国・地域の情勢を確認し、事業経営にかかわる方針や対策を検討する幹部会議を毎朝開催しています。
当社グループでは、組織機能の維持と従業員の安全を確保する就業体制、サプライチェーンとの連携を含め事業継続を図るための諸対策といった、内部のリスクマネジメントと対外的な事業活動の両面において、全社を挙げた機動的な対応を図っています。
1 三密回避を前提にあらゆる行事を刷新
- 2020年3月に開催した定時株主総会では、感染拡大リスクを最大限抑制することを方針とし、アルコール消毒や適切な換気・空調など場内の予防措置はもちろん、株主の皆さまに丁寧な説明を行ったうえで、規模縮小と時間短縮の運営を徹底しました。
- 同4月の入社式は集合形式での開催を取りやめ、新入社員は録画収録した社長からの訓示をモバイル端末で動画視聴するという初めての手法を採り入れました。
- 同8月の創立75周年記念式典は、通常600名収容の本社大ホールに本部長以上の幹部24名のみがソーシャルディスタンスを確保して臨席し、従業員はオンラインでリアルタイムに中継される式典を各拠点や自宅から視聴しました。
- 毎年末にステークホルダーの一角である報道機関の記者の皆さまと、一年の総括と翌年の展望に関する懇談会を開催しますが、同年はWEB会議システムによる完全リモート形式で実施しました。より的確なガイダンスと丁寧な対話を心がけ、参加された30名の方々から高い満足度を得ることができました。
2 非常時体制の中で事業を止めない
- 2020年4月に史上初の緊急事態宣言が日本政府より発出されるにあたり、政府から表明された宣言の趣旨を踏まえ、当社はこれに全面協力する方針を決定しました。業務継続に不可欠な一部の出社等を除き、本社を含む対象地域の事業所を閉鎖して在宅勤務とすることを対外発表し、即座に全面的なリモートワーク体制に入りました。
- 東日本大震災時の教訓から、技術開発を止めないためのインフラを整備してきたこともあり、コロナ禍においても、エンジニアは自宅で必要なデータにアクセスし、必要なシミュレーションや設計業務を滞りなく進めることができ、社会的にも先行事例として注目され、各種報道で取り上げられました。
- 事業継続の要である物流、生産部門では、入構時のマスク着用・検温・消毒の徹底、ソーシャルディスタンスの確保など構内での三密回避の徹底、毎朝礼時に対策徹底を周知するなど、操業を止めることのないよう、常時緊張感を持って事業に従事し続けました。コロナ禍にあっても、自動車産業は生活に必要な物資を運ぶインフラとして休むことなく動き続けており、このライフラインを支えるため、お客さまに商品を届けるべく現場で尽力しています。
3 柔軟性を持ってWITHコロナに対処
- 感染状況を踏まえて発出される政府方針にもとづき、地域ごとに異なる対応が求められますが、当社は適宜、行政から示される接触率を基準に、出社率の上限設定やフレックス勤務・時差通勤の推奨などフレキシブルに就業体制をコントロールしています。
- オフィスや食堂・手洗い場でのソーシャルディスタンス確保はもとより、アクリルボードによるパーテーションの設置や分散利用、音楽アナウンスによる定期的な換気の励行など、行動変容を進めました。
- 学生の就職活動に対する混乱や不安を払拭すべく、リクルート方針・計画について、早期にプレスリリースを通じて告知しました。対面型の会社説明会や面接を中止し、オンライン形式に切り替えるとともに、対話の機会や所要時間を通常より多く確保して丁寧なコミュニケーションを図りました。
4 地域社会にできることを少しでも
- 医療体制強化の必要性に賛意を示し、これを支えるために地域経済団体が創設した基金に寄付金を拠出したほか、最前線で対策に従事する家庭の児童が孤立しないように巡回見守りを兼ねた配食・学習支援などを行う団体に寄付を行い、支援しています。また、公的施設での有効活用が見込まれる非接触型体温測定器を地域の自治体に寄贈しました。
- 最前線で治療・看護にあたる医療従事者の方々に、手作りの温かい料理をデリバリーする有志による企画「Smile Food Project」を支援しています。
継続的な経営トップからのメッセージ発信
当社では、隔月発刊の社内報を通じて、あるいは創立記念式典や新年祝賀式典といった社内行事の場で、経営トップが役員・従業員に対して意思のベクトルを合わせるべく、メッセージを随時発信しています。また、これに限らず、都度重要な局面においては不定期ながら、Eメールを通じて頻度の高いメッセージ配信を行っています。
今般、新型コロナウイルス感染拡大を受け、ステークホルダーの一つでもある従業員に対し、事業経営を支える奮闘への謝意を伝えるため、あるいは意識の鼓舞や情勢認識の共有のため、社長からは努めて積極的な意思伝達、コミュニケーションが展開されています。
以下、2021年8月に迎えた創立記念式典での社長メッセージを一部抜粋、ご紹介します。
第76回創立記念日に際して(社長祝辞より抜粋)
- ~今回、未曽有のパンデミックに見舞われ、社会全体が混乱し、これまでの生活様式も変容を求められ、戸惑いがありましたが、見えなかったものが見えた、というのも事実です。
当社でも、一部の地域では製造拠点の一時閉鎖が求められるなど、製品の生産・供給に支障が出たほか、感染拡大を防止するために事業拠点の閉鎖も余儀なくされましたが、即座に全面的な在宅勤務に切り替えるなど、過去に例のない対策をしながら、事業を継続する努力を続けました。
一方、米国においては、タイヤ事業が人や物の移動を支えるために不可欠なものとして「エッセンシャルビジネス」と認められ、当社グループが手掛けている事業の社会的責任の大ききを再認識する機会にもなりました。 -
コロナ禍を経て、我々自身の事業の存続、つまり当社自身のサステナビリティを守る局面、一方、当社の存在が社会のサステナビリティに寄与する局面、この双方を体験したといえます。
これは、今、企業経営に求められているサステナビリティを考えるうえで、根幹的な体験だと私は感じています。
世界各地に多様な従業員一人ひとりが意欲を持って働ける職場があり、また、創意工夫の中で技術イノベーションが生まれ、健全な環境が確保された場所から原材料を調達し、環境負荷を抑えた工場で独創的な製品を生み出す。そして、お届けした製品を使ってくださるお客さまが豊かに、幸せになる。
内なる基盤と外に創出する価値、内と外、会社と社会がしっかりバランスよく補完し合いながら、よりよい世界をつくっていく。シンプルに言えば、それがサステナビリティの実現だと私は考えています。 - 当社は、経営の中にサステナビリティ、ESGの考え方をビルトインしていくことを「中計’21」で宣言しました。サステナビリティは、お題目として置いておくのではなく、真に事業に統合していかねばならないということです。
サステナビリティは、これまで排出してきたCO₂をいかに減らしていくか、といった、過去の副産物、遺物との戦いという側面もありますが、見方を変えれば、企業の行動、社員の行動が変わることで、未来を変えていく活動であるという考え方もできます。~